【書評】『希望のつくり方』

本日、労働経済学を専門とする玄田有史氏の『希望のつくり方』(岩波新書、2010年)について紹介します。

 

 

この本を紹介する前に、「希望学」について紹介しておきます。

2005年に希望学(正式には「希望の社会科学」)が東京大学社会科学研究所に誕生しました。

 

project.iss.u-tokyo.ac.jp

 

希望と社会の関係を考察するための新しい学問。それが希望学です。

 

f:id:officeyou328:20220222235001p:plain

 

希望学が誕生して以来、数多くの研究成果が世に送り出されました。今回、紹介する『希望のつくり方』は、その研究成果の1冊です。

 

この本について、岩波書店公式ホームページでは以下のように書かれています。


希望は与えられるものではない,自分たちの手で見つけるものだ!でも,どうやって?希望が持ちにくい時代に,どこから踏み出せばよいのだろう?著者が出会った,たくさんの声に耳を澄ませて,希望をつくるヒントをさがし出す.「希望学」の成果を活かし,未来へと生きるすべての人たちに放つ,しなやかなメッセージ.
目次
はじめに
第1章 希望とは何か
第2章 希望はなぜ失われたのか
第3章 希望という物語
第4章 希望を取り戻せ
おわりに

 

玄田氏は、希望学を牽引する中心メンバーです。

玄田氏によれば、希望とは(40-48頁)、

 

Hope is a Wish for Something to Come True by Action with Others.「希望」とは4つの柱から成り立っているといいます。ひとつの柱は、 WIsh つまり「願い」「思い」「気持ち」です。
二つ目の柱は、Something あなたにとっての」大切な何かなのです。
三つ目の柱は、ComeTrue 実現です。
四つ目の柱は、Action つまり行動です。

 

本書で一番印象に残ったのは、下記の第4章の一節です。

 

戦争や殺戮が多くの人々の生命を理不尽なかたちで奪ってきたという悲しい歴史を、私たちは持っています。太平洋戦争から半世紀以上を経て、今や戦争を体験していない世代が国民の大多数を占めています。そのために戦争がもたらす絶望についての想像力を、私たちはときに失いがちです。だからこそ、私たちは過去に起きてしまった絶望の体験者の声に耳を澄まし、そして歴史から謙虚に学ぶ姿勢を失ってはいけないでしょう。歴史を軽視した先には、再び絶望が待っているのだということを、私たちはつねに肝(きも)に銘(めい)じておくべきです。歴史を蔑(ないがし)ろにして、希望は決して語れません。173頁

 

これからも「希望学」を学び続け、希望を持って、一日一日を大事に過ごしていきたいと思います。