坂本龍一の映像音楽を通して地域を読む

先日、映像音楽の巨匠久石譲の映像音楽を紹介しました。
本日、日本のもう一人の映像音楽の巨匠坂本龍一の映像音楽を通して地域を読み解いてみます。
 
本題に入る前に余談ですが、ブログを先月からスタートして以来、大体毎日フォロアーが5-10名ほど増えています。
フォローしてくださり、ありがとうございます!
読者のなかには、私のこと、熟知している知人もいますが、ほとんどが未対面の方です。
新しい読者が、この先の内容が頭に入りやすくするために、時たま私のバックグラウンドを開示しながら、話を進めさせていただきます。
学部時代は外国語教育、修士課程は日中韓の言語文化の比較研究、博士課程は人の移動と移民研究および東アジア地域研究を専攻しました。研究領域がどんどん広がっていきました。
その理由を簡単に言いますと、ライフワークとしての多文化共生について研究するために、一つだけのアプローチは限界があると思うからです。
あくまで私の考えですが、研究は自己満足のためではなく、研究成果を社会に還元しなければならないと思います。つまり、コンスタントに知識をインプットし、定期的にアウトプットもしなければなりません。
私の場合、インプットは主に読書ですが、また音楽を聴き、映画もみます。そして、定期的に様々な現場に行ってフィールドワークも行います。
アウトプットは、通訳・翻訳、語学研修、オンライン講座など。ブログ記事を書くのも、アウトプットだと考えます。
前置きが長くなりましたが、本日の本題に入ります。
久石譲と同じく、坂本龍一についても改めて紹介する必要もないと思いますが、確認のために略歴を見ましょう。
1952年東京生まれ。3歳からピアノを、10歳から作曲を学ぶ。東京芸術大学大学院修士課程修了。78年にソロ・アルバム『千のナイフ』でデビュー。その後、無数の作品を発表。自ら出演した大島渚監督の『戦場のメリークリスマス』(83)をはじめ、ベルトルッチ監督の『ラスト・エンペラー』(87)、『シェルタリング・スカイ』(90)、イニャリトゥ監督の『レヴェナント』(2015)など30本以上を手掛けた映画音楽は、アカデミー賞を受賞するなど高く評価されている。地球の環境と反核・平和活動にも深くコミットし、「more trees」や「Stop Rokkasho」「No Nukes」などのプロジェクトを立ち上げた。2014年7月、中咽頭癌の罹患を発表したが翌年に復帰。以後は精力的な活動を続けた。2021年1月に直腸癌の罹患を発表し闘病中。自伝『音楽は自由にする』(新潮社、2009)などの著書も多い。
今回、坂本龍一が音楽を担当したベルトルッチ監督の『ラスト・エンペラー』に着目します。
下記はこの映画の情報です。
イタリア・イギリス・中国合作。1950年。5年間にわたるソビエト連邦での抑留を解かれ送還された中国人戦犯の中に、清朝最後の皇帝、ラスト・エンペラ―宣統帝愛新覚羅溥儀がいた。3歳で清朝皇帝の地位につきながらも、近代化の嵐にもまれ、孤独な日々を送らざるを得なかった溥儀。彼が即位してから文化大革命以降に至るまで、激動の生涯をあますところなく描き出した珠玉の歴史大作。
1987年アカデミー賞では作品、監督、撮影、脚色、編集、録音、衣装、美術、作曲とノミネートされた9部門すべてを受賞。また、甘粕正彦役出演のほか、音楽も担当した坂本龍一は、日本人として初めてアカデミー作曲賞を受賞。

 

ラスト・エンペラー(溥儀)の略歴
• 1906年 生まれ
• 1908年  清朝第11代皇帝(光緒帝)死去
  西太后により擁立され第12代皇帝
•  1912年 辛亥革命(1911年)により退位
•  1924年 クーデターにより北京(紫禁城)を追われ
•  1925年  天津日本租界へ移転    
•  1931年  天津から新京へ(現在の長春
•  1934年  「満洲国」皇帝即位
•  1945年  「満洲国」崩壊にて退位
•  1950年 撫順戦犯管理所に収容
•  1959年  釈放
•  1967年  北京で死去

              偽満皇宮博物館(「満洲国」皇宮跡地) (中国長春
『ラスト・エンペラー』の映像音楽について、NIKKEI STYLEのインタビューを受けて、坂本龍一は次のように述べています。
「監督は『舞台は中国だが欧州の映画だし、戦前・戦中の話だが現代の話でもある。それを表す音楽にしてほしい』なんて難しいことを注文してきた。でも、悩んでいる暇はないので、とにかく西洋風のオーケストラ音楽に中国的な要素を盛り込み、ファシズムの台頭を感じさせるイメージで曲を作ることにしました。」
 
坂本龍一の縦横無尽な想像力を駆使して、作り上げた映像音楽が、この映画の魅力を増しています。
私にとって、地域研究を進める際に、久石譲が音楽を担当したトンマッコルへようこそ(Welcome to Dongmakgol)』および坂本龍一が音楽を担当した『ラスト・エンペラー』は、欠かさない作品です。
 
音楽には脳にひらめきを与える要素があると言われています。
 
私は、定期的に『ラスト・エンペラー』の映像音楽、『トンマッコルへようこそ(Welcome to Dongmakgol)』の映像音楽を聴いています。聴くたびに度に新たなひらめきを得る気がします。
 
参考文献
・坂本 龍一|ソニーミュージックオフィシャルサイト - Sony Music
https://www.sonymusic.co.jp/artist/RyuichiSakamoto/ (2021年8月8日閲覧)
坂本龍一×伊東信宏(音楽学者)「コロナ禍で音楽を考える」──『コモンズ:スコラ vol.18 ピアノへの旅』刊行記念対談 _ GQ Japan
https://www.gqjapan.jp/culture/article/20210724-ryuichi-sakamoto (2021年8月8日閲覧)
ラストエンペラーのテーマ 坂本龍一 the last emperor-theme- ryuichi sakamoto
https://www.youtube.com/watch?v=8TVvJWfzq0s (2021年8月8日閲覧)
坂本龍一 役作り曲作り、『ラストエンペラー』の狂騒|(裏読みWAVE|注目エンタメ|NIKKEI STYLE)
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO35963470R01C18A0000000/?channel=DF280120166607 (2021年8月8日閲覧)
坂本龍一『音楽は自由にする』新潮社、2009年。